1・19シンポに各界から170人以上が参加

自主共済を守れ!で会場が一体となった


 「共済の今日と未来を考える懇話会」(以下、懇話会)は、1/19にシンポジウム「改正保険業法とこれからの共済」を開催しました。シンポジウムには、自主共済を運営する団体などから170人を超える参加があり、この問題に対する関心の高さをうかがわせました。
 懇話会がこのシンポジウムを開催した目的は、自主的な共済がどれほど会員のために、また地域経済や厚生行政などを下支えしてきたかを実績の中で明らかにするとともに、今回の新保険業法によって、どれだけ多くの自主共済が存亡の危機に立たされているかを訴える機会とすることでした。同じ悩みや不安を抱える団体の方々、そして今回適用除外とされた労働団体の方々が、この問題を正面から受け止めてくださいました。しかし、金融庁からは再三の要請にも関わらず、「少額短期保険業者」向けの講習会などを理由に参加がありませんでした。
 当日は、広津素子議員(衆議院比例九州・自民)、佐々木憲昭議員(衆議院比例東海・共産)、大門実紀史議員(参議院比例・共産)の各国会議員秘書にもご参加していただきました。
 このほか、保険会社からの参加や、保険毎日新聞、新日本保険新聞、インシュアランス、赤旗などのマスコミ取材もありました。(マスコミ取材への対応は、懇話会に参加する全日本民医連共済組合の渡邊専務理事に担当していただきました。)



~シンポジウムの概要・自主共済を守る運動を強めよう!と会場参加者が一つになった~

 シンポジストとして参加いただいた本間照光青山学院大学教授、押尾直志明治大学教授から、新保険業法の真のねらいとその背景、法案提出までのすり替え劇の模様、そして金融庁が国会審議などを無視し、消費者保護を名目に保険と共済を同一視して、自主共済の運営を損なう規制の包囲網を着々と狭めている問題、これらに対峙した運動の重要性と展望などを示す発言をいただきました。
 シンポジストには、両教授のほかに自主共済を守る運動をすすめる懇話会の参加団体から、日本勤労者山岳連盟(労山)の斉藤理事長、全国保険医団体連合会(保団連)の森理事が参加し、この間の運動報告と制度を守れ!国会審議や法改正の趣旨に反した金融庁の弾圧を許すな!などの訴えを行いました。同じく懇話会に参加する全国商工団体連合会(全商連)の西村副会長が司会を担当しました。西村副会長は、シンポジウムの締めくくりの挨拶の中で、1月27日締切りとなる政省令案への意見書を、各団体から金融庁宛に提出して欲しいとの訴えを行いました。また、保団連森理事から、金融庁へ団体要望書を集中するようにとの呼掛けがあり、参加者からも、今日のシンポジウムの発言や交流に確信を持って、それぞれの団体が波状的に国会議員などへの要請行動を強めよう、との訴えがありました。まさに、主催者と参加者が一体となったシンポジウムとなりました。

 当日参加された皆様に、この場をお借りして、改めてお礼申し上げます。


登山文化の普及と安全な登山のための教育・啓蒙活動、
そして構成員のための遭難対策基金の運動

 日本勤労者山岳連盟(労山)の斉藤理事長は、登山家の遭難対策基金について、37年前に発足させた当時を振り返り、どの損保会社も請け負ってくれなかったため、自主的に立ち上げざるを得なかったことなどを紹介しました。
 登山文化の普及とともに、安全な登山のための教育や宣伝、いざというときの救助活動と遭難対策基金の役割などを分かりやすく説明しました。そして、現在、構成員の2万9千人が加入する自主的な共済制度である遭難対策基金も、構成員とともに制度の改善を重ね、今日の制度内容に発展・成長してきたことを述べました。今回このように、自主共済が、保険会社と同列にみなされて規制の対象にされるとは夢にも思わなかった、自主的な共済を守るためにともに運動したいと述べました。


 
30数余年の歴史・実績は何物にもかえられない。
変えさせない!!

 全国保険医団体連合会(保団連)の森理事からは、35年間発展させてきた保団連の休業保障制度が、地域医療を支えてきた開業医にとって、地域医療を守るためにかけがえのない制度であることを自身の実感から紹介しました。
 また、この間の金融庁の担当官とのやり取りを通じて、金融庁が法案審議の経過を全く無視したやり方で、政省令の策定作業や解釈拡大をすすめ、消費者保護の名目で保険会社になればいい、などと言われたことを紹介し、金融庁の独断専行の姿勢と問題を告発しました。そして、多数の世論で適用除外を勝ち取りたいとの訴えがありました。


当初の目的は無認可保険の取り締まりである

 本間・押尾両教授からは改めて、法案の最初の目的と、論理のすり替えが繰り返され、如何にして今日の規制にまで至ったのかを説明しました。
 「改正」保険業法の本来の目的は、消費者保護であり、古くは、オレンジ共済の破綻に見られるように共済の名を借りた“無認可保険商法”を規制することが法改正の趣旨であり、発端であったと指摘しました。
 本間教授は、「ニセ共済」の現状をつくった背景として、金融市場の規制緩和で競争が激化し、保険離れを背景に、掛け金の安い共済に魅力が集まり、真面目に運営している共済を装って、不特定多数を相手にした無認可保険、共済便乗保険商法が広がってきたこと、しかし、国民生活センターへの消費者からの苦情が多発したのに対し、金融庁は、なんらの取り締まりも規制もせずに放置したことなどを指摘しました。当時の保険業法でも、こうした共済便乗保険商法を取り締まることが十分できたことは、行政の担当者自身が書いた「コンメンタール保険業法」の中で自ら説明してきたことからも明らかであり、これまで何の指導も規制もしてこなかったために消費者被害が出てきたことに何の反省もせず、共済便乗保険商法と同様に、共済に便乗して今度は共済を規制する態度に出てきたことを批判しました。
 「2004年根拠法のない共済調査」(総務省)でも、共済の名を冠した架空の団体が無認可で保険商品を不特定多数に販売して、保険料を収受した後に行方不明になっていたり、支払いのトラブルが社会的に注目される問題となる中で、取り締まるべき対象が明らかとなっていました。しかし、論理のすり替えがあり、“消費者保護”を名目として、根拠法をもたない自主的に運営されている共済を、すべて保険業法による規制の対象としてしまったのです。真に構成員が限定され、構成員の自治の下に営まれている共済は除外するという金融審議会の報告や国会審議を踏まえていない暴挙であると述べました。
 金融庁が今になって消費者保護の名の下に、団体の目的のために、保険の技術を取り入れながら発展させてきた自主共済を規制することは、消費者保護に反し、団体自治を損なう本末転倒であり容認できないと批判しました。


共済と保険を同一視した規制は誰の声?

 また、どこで論理のすり替えがあったのか?の解明とともに、規制の真のねらいが、アメリカ政府からの要望書を受けて、保険会社並の規制で競争条件を同一にし、市場開放を迫ることにあることを明らかにしました。
 押尾教授は、既に保険業法の下で厳格な規制を受けているはずの保険会社が、不払いなど昨今の社会的な問題を引き起こしていること、金融庁などは、これらの問題の根本原因の究明や過去の破綻事例とその問題への行政責任を曖昧にしたままだと指摘しました。そして、歴史的に共済と保険が緊張関係にある中で、真面目に運営してきた自主共済は、保険会社以上に社会的な責任や運営努力が求められ、実際に制度も破綻してこなかった、これは構成員のために実施する共済は、団体の高い自主性と自己責任が求められ、団体自治によって運営されてきた結果だと述べました。今回規制を外れた制度共済も、農協法の改正に見られるように、根拠法自体の改正で、保険会社並の規制が強いられてきており、日米財界が要求するイコールフッティング、同一競争条件で行えとする圧力があることも指摘しました。
 今日、何らかの共済に加入している国民は実に6000万人を超え、社会的に根付いた存在となっている。
 自主共済を守るためにも、共済規制の潮流が社会的な大問題となっていることを発信していくこと、そのための共済団体が根拠法のあるなしにかかわらず大同団結していくことが大事だとの力強い訴えがありました。