○鴨下主査 昨日に引き続き内閣府所管中金融庁について審査を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。広津素子君。
○広津素子議員 佐賀県の保険医団体から陳情がありまして、その内容の中に本質的な部分を含むと考えましたので、大臣に御質問をいたします。
まず、背景といたしまして、改正前の保険業法は、不特定の者を相手方として保険の引き受けを行う保険業が対象であり、任意団体や特定の者に対して保険業類似の事業を行うものについては、法規制も監督官庁もありませんでした。
これに対して、一昨年の第百六十二回通常国会で成立した保険業法等の一部を改正する法律、新保険業法では、契約者保護の観点から保険業法の適用範囲を見直し、企業内共済、労働組合等の共済、小規模な共済など、特定の者を相手方として保険の引き受けを行うものにも原則として保険業法の規定を適用することといたしました。
なお、一定の事業規模の範囲内で少額短期の保険のみの引き受けを行う事業者にも、少額短期保険業者という登録制の簡便な枠組みを創設するとともに、既存の事業者には二年間の移行期間を設けるなどの経過措置を講じています。
これに対して、全国商工団体連合会、全国保険医団体連合会、山岳連盟など、長年にわたって自主共済で団体構成員の相互扶助を行ってきた団体から、自分たちの自主共済の存続を求める声が聞かれます。そのため、なぜそれができないのか、そして、それは正しいのかについて御質問いたします。
次に、質問です。
憲法二十一条で国民の権利として結社の自由が定められ、民間人が会社を設立することが自由であるのと同様に、共済を設立するのも自由であるのが原則と考えます。したがって、自主共済は、いわばあって当然のものと思います。また、団体自治権を尊重することも重要であると思います。
そのような中、小規模でない共済は、根拠法や所管する行政庁がなければ認めないとするのはなぜでしょうか。まず、これについてお答えください。
○山本国務大臣 広津議員おっしゃるように、結社の自由は守らなきゃなりませんし、団体自治権を尊重することは当然でございます。また、自主共済も、相互扶助の考え方というのは日本のよき伝統だというように考えております。
しかし、特別な根拠法に基づかず設立された任意団体等が行ういわゆる根拠法のない共済につきましては、特定の者を相手方とする自発的な共済を基礎としていることから、従来、契約者を保護するための規制は、おっしゃるように基本的に必要ないとされてきたことは、先ほど御指摘のとおりでございます。そして加えて、農協、生協という根拠法がある制度共済につきましても、所管官庁により契約者保護等の観点から必要な規制が実施されているという事実から、保険業法の適用対象外とされました。
近年、根拠法のない共済の規模、形態の多様化が進む中で、共済をめぐりさまざまな消費者保護上の問題が指摘されることも、先生御承知のとおりでございます。いわばそうした一般庶民に、共済の名をかりて、また経済的な損失を与えていく規模の大きさ等々を考えるならば、相互扶助や構成員の自治による監督だけを理由として、そのすべてを契約者の自己責任という問題で片づけてしまうことは、どうも適切でない時代が来たと言わざるを得ません。
そんな背景の中で、平成十七年に保険業法を改正し、保険契約者が特定されていると否とを問わず、根拠法のない共済は、企業内共済、小規模なものを除き、保険契約者等の保護と健全な運営の確保の観点から保険業法の適用対象とするとされたところでございました。
以上です。
○広津素子議員 今のお答えを要約しますと、監督ができない共済を偽って消費者に損害を与えたマルチ共済というのがあって、そういうものがあると契約者の保護ができないために保険業法を適用することにしたということだと思います。
では、監督・規制ができないという問題であれば、必要な事項を定めてそれを守ることを課したらいかがでしょうか。というのは、保険会社にならなければいけないというのではなくて、自主共済のまま必要な事項を課したらいかがかというのが私の質問です。
例えば必要なこととは、契約者の保護ですから、最低資本金を定めるとか、自主共済もその運用状況について適切な会計を行うことを義務づける、契約者にその運用状況のディスクローズを義務づける、権利義務の主体としての法人格をつくるなどがあれば、自主共済でよいのではないでしょうか。
○山本国務大臣 まさに、先生のおっしゃることは、当を得た大変すばらしい観点だろうというように考えております。
改正保険業法では、いわゆる根拠法のない共済が保険業法のもとで引き続き必要な保障を提供し、適切に事業を継続するように、保険会社の免許制の仕組みに加えまして、新たな登録制の枠組みとして少額短期保険業制度を創設したところでございます。
この少額短期保険業制度と申しますものの要件を例示いたしますと、広津議員おっしゃるように、まずは最低資本金の定め、次に一定以上の規模を有する団体の財務諸表に対する外部監査の義務づけ、次に業務及び財産の状況に関するディスクロージャーの義務づけ、そして一定の法人格、株式会社または相互会社であっていただかなきゃなりませんが、その取得義務づけ等の規制を及ぼすというように定めたところでございます。
これらの規制はいずれも、保険契約者保護の観点から必要最小限度のものとして保険業法で義務づけることとしたものでございますが、こうした規制の実効性を担保して、契約者を保護するためには、さらに行政庁において適切な監督を行うことが必要不可欠であるとも考えているところでございます。
○広津素子議員 今、法人格というのは保険会社か株式会社でなければいけないということをおっしゃいましたが、それはそういうことではなくて、例えば共済というものでもいいのではないかと私は思います。その他の部分については、ほとんど賛成でございます。
また、共済という名で運営されて実際には契約者に利益を与えないものに関する取り締まりは、旧保険業法から新保険業法に変わってどう変化したのかというのをまずお聞きしたいのと、また、共済という名で運営されて実際には契約者に利益を与えなかったものについては、これは共済ではなくて詐欺だと思いますが、いかがでしょうか。
○三國谷政府参考人 お答え申し上げます。
いわゆる根拠法のない共済につきましては、自発的な共助を基礎としておりますことから、従来、契約者を保護するための業法上の規制は基本的に必要ないとされてきたところでございます。その上で、悪質業者の対応につきましては、事案によりますけれども、出資法違反や詐欺罪に該当する事件につきましては、捜査当局による立件や起訴などが行われてきたところでございます。
しかしながら、大臣がお答え申し上げましたとおり、近年、共済の実施団体が急増し事業形態も多様化する中で、根拠法のない共済につきましては、消費者保護上の問題が指摘されるようになったところでございます。このため、改正保険業法におきましては、根拠法のない共済に対する新たな規制を整備し、募集時の行為規制や財務規制などを課すこととしたところでございます。
これによりまして、いわゆるマルチ商法のようなものを含めまして、任意団体等による根拠法のない共済でありましても、契約者保護上問題があるものについては、改正保険業法のもとで金融庁が適切に検査監督を行うことが可能になったものと考えているところでございます。
なお御指摘の、共済という名で運営されまして実際には契約者に利益を与えないものということでございますが、これも具体的な事案によるわけでございますけれども、共済という名で運営されていたといたしましても、契約者に利益を与えずに、これをだまして経済的損失を与える目的を持って行われる事業、こういったものは、事案によりましては詐欺罪などに該当し得るものではないかと考えているところでございます。
○広津素子議員 どうもありがとうございました。
ただ、今の中で、共済という名で運営されているものの中に詐欺は確かにありますけれども、全部が悪い共済ではないので、全部の自主共済をやめさせるというのはいかがなものかと思います。では、やめさせて、保険会社にならなければいけないかというのもこれもどうかなと思いますので、自主共済のまま適切な管理監督ができるようにできないかなというのが私の提案でございます。
自主共済の形で運営すると、すべての共済が契約者保護に値しないというふうに考えるのは行き過ぎであると私は思います。どういう要件が整えば問題がないと言えるのか、金融庁側の見解をお教えください。
○山本国務大臣 ルールをつくるときに、具体的なミクロの、個々の事案を全部拾えるかどうかというのは非常に難しい面があります。やはり、文章にする、法律にするということになりますと、規範ですからおのずからそこには抽象化が出てまいります。その意味で、こんないい共済があるけれどもこのルールではというおしかりは常に覚悟しながら我々もつくってまいりました。
そういう中で、具体的なルールといいますのは、最低資本金、財務諸表についての外部監査の義務づけ、業務及び財産の状況に関するディスクロージャーの義務づけ、一定の法人格の取得義務づけ、あるいは保険会社特有のソルベンシーマージン比率の規制、そして資産運用規制、安全にやっていただきたいというようなことなどがございます。そしてできるだけ、現在機能している、しかも正しく機能している無認可共済について、ぜひとも今後とも継続していただきたいという思いを込めて登録制とさせていただきました。
以上でございます。
○広津素子議員 登録制でできるのは少額短期の共済だけなんですよね。大きくやっていますと保険会社にならざるを得ないということになっていますので。共済としてやりたい人をどうして保険会社にしなきゃいけないかというのが一番問題なところで、共済という組織のまま必要なことをやればいいのではないかというふうに私は提案申し上げたいんですね。なるべくそうしていただきたいなというふうに思っております。
なお、その要件を満たすように法律で義務づけた上で自主共済を認め、団体自治権を尊重したらどうかというふうに思いますが、それはどうしてできないんでしょうか。どうして保険業法でなければいけないんでしょうか。
○山本国務大臣 先ほどお答えしました保険業法上の要件はいずれも、保険会社または少額短期保険業者として事業を行うために、保険契約者保護の観点から、必要最小限のものとして義務づけられた規制でございます。これらの規制に沿って事業を実施していただきたいと考えております。
もとより、金融庁としましては、こうした規制によって各共済の事業の継続をいたずらに困難にすることは本意ではございません。各共済が事業継続に向けて、現行制度のもとでどのような選択肢をとっていけばよいのか、各共済の実情をよくお伺いしながら、引き続ききめ細かく、かつ真摯に御相談に乗ってまいりたいと考えておりますので、個々具体的なことにつきましては、担当部署での御相談にぜひおいでいただきたいというように思っております。
○広津分科員 ありがとうございます。個々に事情が違いますので、ぜひきめ細かく相談に乗っていただければと思います。
なお、保険医団体のように、医師自身が病気になったときに、患者や従業員のために休診にすることができず、かわりの医師を見つけて代診を依頼しなければならないような場合、今までは保険医団体の自主共済に加入することで、そのすべてに開業医が責任を負っていました。つまり、リスクを開業医が責任をとって、かわりの人も自分が病気になったら見つけて、所得が少なくなるのでそれは共済から補充してというようなことだったんですが、それを医師に要求するのはかなり責任が過重ではないかと思うんですね。医者は、病気の専門家ではあるんだけれども、経営の専門家ではないんですね。自分が病気になったときにそうするのは大変だと思います。しかしながら、これらをすべて個人の開業医に責任を負わせることは、開業医にとって過重な負担であると考えますので、むしろ医療システムの中の一環として、厚生労働省の制度共済とするのが妥当ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
つまり、地域には基幹病院は必要です。その周りにホームドクターがあって、開業医は必要なんですね。それぞれの科、整形外科も必要だし、内科も必要だし、産婦人科も必要ですよね。そういう人たちが病気になったときに、結局そこの地域の人たちはその科がなくなるということなんですね。そういうことは医療制度としても困るわけですから、これは厚生労働省の管轄で、ある程度の補助金を入れて制度共済にしてもおかしくないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○菅原大臣政務官 今お話がございました保険医団体、全国の保険医団体連合会につきましては、今お話ありましたように、自主的な共済として、医師が病気になった場合の休業補償制度、あるいは老後の生活の保障のための年金制度等を運営していることは重々承知をいたしております。
そして、一昨年の保険業法の改正後の今日、御案内のとおり、制度共済、小規模な共済、少額短期保険業者そして保険会社というふうに新たに四つに区分をしたわけでございますが、この中のいずれかの形態をとるものというふうに承知をいたしております。
当該団体の今後のあり方につきましては、医療関係団体、医師会等ですね、あるいは金融庁とも相談の上、その団体の方で適切に御判断をいただくということで厚労省としては認識をいたしております。
なお、老後の所得保障につきましては、例えば上乗せ年金を支給する任意加入の制度でもございます国民年金基金制度が従来ございます。個々のお医者さんにその制度を活用すること等によって対応が可能なのではないかな、厚生労働省としては今このように考えているところでございます。
そして、広津議員が最後にお話ありました、当共済を厚生労働省の方で所管していくべきではないかというお話でございます。確かに、農協なんかは農水、生協なんかも我が厚生労働省ということで所管をして、歴史的な背景があるわけでございますけれども、制度共済の形態といたしまして、現行制度におきましても、中小企業等協同組合法に基づく中小企業共済協同組合連合会として共済制度を創設することが可能となっておりますので、数多くある業種の中で、お話がありました医師のみ特化して新たな共済制度を創設するということは、その合理的な理由というものが私どもは見出せない現況にございまして、今のところそのように考えているところでございます。
○広津素子議員 医師のみ見出せないというのもちょっとおかしいかなと思います。というのは、農協、農業は見出せる、理由がちゃんとあるわけですね。生協もちゃんと共済をやっているわけですね。公務員共済もありますし、教職員組合の共済もありますよね。どうして医師はいけないんですか。
○菅原大臣政務官 申しわけございません。言い方があれだったかもしれません。
医師だけだめなんじゃなくて、医師のみ特化した共済制度を創設するということは現在のところ難しい状況にある、こういうことです。医師だけがだめなのではなくてです。
○広津素子議員 それでは、今までせっかくつくっている共済を何らかの形で、制度共済にするなら安全だったわけですけれども、それがもし厚生労働省ができないというのであれば、ほかの形で、せっかく今までつくって運用してきた共済を残すという形で検討していただきたいなというふうに思っております。
○菅原大臣政務官 今答弁の中にお話を申し上げましたように、保険業法が改正されて四つに分かれたということは先ほど御答弁したとおりでございますが、その中の制度共済の中で、現行制度の中で、中小企業等協同組合法に基づく中小企業共済協同組合連合会として共済制度を創設できますよということが可能になっておりますので、その制度の中で、お医者さんもその制度を創設するということは担保されておりますから、私どもとしては、そこの中でしっかり推進をしていくことが妥当ではないかというふうに考えております。
○広津素子議員 そうしたら、医師も中小企業として中小企業の共済になればいい、そういうことですか。
○菅原大臣政務官 中小企業等協同組合法の中で可能でございますので、その中でできるのではないでしょうかというふうな厚生労働省としての今の現況の考えでございます。
○広津素子議員 わかりました。
何らかの方法で自主共済が残ればいいので、今それを模索しております。いいアドバイスをどうもありがとうございました。
○鴨下主査 これにて広津素子君の質疑は終了いたしました。
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